2022年の傑作腕時計ランキング、新作部門の第3位はパテックフィリップからゲリラ的に打ち出された、新型ノーチラス Ref.5811/1Gです!
なお、新型ノーチラス Ref.5811/1Gに対する当店内で総評・コメントでは、「ようやく後継機が出てくれた」ことに対するファンとしての安堵感と、「今後のパテックフィリップの動向」への期待感が、半々を占めておりました(そして、なかなか買えないであろうことに対する諦観も)。
パテックフィリップはロレックスなどとともに、3月下旬に開催されたWatches & Wonders Geneveで新作発表を行いました。
その時、新型ノーチラスのリリースがなかったことに対して話題になるのは、さすがパテックフィリップと言うべきでしょうか。
ノーチラスは、言わずと知れたパテックフィリップのスポーツウォッチです。
初出は1976年。この4年前の1972年に誕生しているオーデマピゲ ロイヤルオークとともに、現在腕時計業界のトレンドとなるラグジュアリー・スポーツウォッチ(ラグスポ)を牽引する存在とも言えますね。
※ラグジュアリー・スポーツウォッチとは、特に決まった定義はありませんが、ラグジュアリー・メゾンが製造していること。薄型でケースとブレスレットがシームレスになっていることなどを特徴とするスポーツウォッチです。
代表的なモデルは前述したオーデマピゲ ロイヤルオークにパテックフィリップ ノーチラスの他、ヴァシュロンコンスタンタンのオーヴァーシーズ、ランゲ&ゾーネのオデュッセウスやジラールペルゴのロレアート等が挙げられます。
潜水艦「ノーチラス号」に名前を由来する当ラグジュアリー・スポーツウォッチは、その名の通り潜水艦の舷窓(船体にある小窓)をモチーフにデザインされております。
パテックフィリップ ノーチラス
デザイナーは、ロイヤルオークも手掛けた天才ジェラルド・ジェンタ氏。
ケース両サイドに備わった「耳」や八角形のベゼルは一見するとダイナミックにも思えます。しかしながら雲上ブランドであるパテックフィリップらしい、上品な薄型ケース・ブレスレットはシームレスとなっており、パテック フィリップ偽物 美しく丁寧な仕上げと併せて唯一無二の高級感を示します。
https://housekihiroba.jp/shop/c/c01pp/
1970年代、パテックフィリップやオーデマピゲのようなハイメゾンが、ステンレススティール製のスポーツウォッチ(しかもケースサイズは42mmと「ジャンボ」!当時はメンズでも31mm~35mm程度のケースサイズが主流でした)を手掛けるなどといったことは前代未聞でした。
しかしながら後年、対抗機が多くのブランドから続々と打ち出されたことから、いかにオーデマピゲやパテックフィリップのラグジュアリー・スポーツウォッチが成功したかが、垣間見えるのではないでしょうか。
ノーチラスは初代から今に至るまで、時計業界を代表する名作として語り継がれています。
このノーチラス、時計としての傑出した仕上がりもさることながら、近年では実勢相場(市場価格)で何かと話題になりがちです。
何故なら、定価を大きく―遥かに―上回る実勢相場での売買が、さも当たり前のようになっているためです。
2021年まで、最新のステンレススティール製ノーチラスはRef.5711/1Aでした。
2006年にカタログに登場したRef.5711/1A(2010年にブレスレットがマイナーチェンジ)。ノーチラスを象徴するブラックブルー文字盤と2014年にラインナップに追加されたホワイト文字盤を二本柱に、パテックフィリップの人気モデルとして、時計愛好家を中心に一大市場を形成してきました。
しかしながら昨今では、この人気が加速し、流通量を大きく凌ぐ世界的需要が顕在化。結果として、実勢相場が2000万円にも及ぶなどといった事態を巻き起こしているのです。
パテックフィリップはもともと大量生産とは無縁なことに加えて、2020年にホワイト文字盤が。次いで2021年にブラックブルー文字盤が生産終了となったことも、この相場高騰に多大な影響を与えました。
なお、生産終了時の国内定価は3,872,000円。いかに狂騒的な相場感であるかが、おわかり頂けるのではないでしょうか。
こうなってくると、気になるのはRef.5711/1Aの後継機の存在。
初代ノーチラスから系譜を引く3針モデルが姿を消していたため(レディースはあり)、いずれ後継が出るだろうとは言われていました。
しかしながら、世界最大規模の時計業界新作見本市Watches & Wondersでは、パテックフィリップはノーチラスの新型機を発表せず。
そして2022年10月になり、ついにホワイトゴールド製のRef.5811/1Gをリリースするに至ったというわけです。
パテックフィリップ 新作ノーチラス
この新しいノーチラス Ref.5811/1G、先代とデザインコードは大きく変えておりません。これは歴代ノーチラスに言えることであり、初代「ジャンボ」の伝統を踏襲するのが、同コレクションの常でした。
とは言え、要所要所でアップデートを加えるのが、世界最高峰と名高いパテックフィリップの成せる業。
先代Ref.5711/1Aまではケース直径40mmであったサイズを41mmへとアップサイジングし、一方で初期ノーチラスに見られた2ピース構造の採用によって、さらなる薄型化をも図っていることが、新作ノーチラスの大きな特徴です。
パテックフィリップ 新作ノーチラス
出典:https://www.patek.com/en/home
現在ではベゼル+ケース+裏蓋で構成される3ピース構造が主流となっております。3ピース構造は裏蓋をねじ込み式のスクリューバックとすることで、高い防水性を獲得しています。また、ムーブメンを取り出す際は専用工具によって裏蓋を開閉するため、メンテナンス性にも優れる傾向にあります。
一方の2ピース構造は、ケースと裏蓋が一体化した構造となっており、そこにベゼルが取り付けられます。
初代ノーチラスは薄さを堅持するために2ピース構造を採用しつつも、ケース両サイドの「耳」によって120mの防水性を獲得するに至りました。
2022年新作でも、初代構造に回帰し2ピース構造が採用されていますが、代わらずに12気圧防水を堅持しております。
併せてリューズに、新システムが採用されていることもミソ。
これまでの2ピース構造では、ムーブメントを取り出すには時計の文字盤側からベゼルとガラスを外して行う必要があり、そのためジョイント式リューズ(リューズに取り付けられる巻き芯をセパレート式にすることで、簡単にリューズの取り外しが行える構造)になっていることがほとんどでした。
ジョイント式リューズは、ユーズが抜けてしまったなどといったお声を頂くこともあります。
しかしながらノーチラス Ref.5811/1Gでは新たな特許取得システムによって、分割した巻き芯を持たずして、文字盤側からこれを引き抜ける仕様にした、と!
ただ薄く美しくするのみならず、実用面にも配慮するのが、繰り返しになりますがパテックフィリップならではですね。